脊柱管狭窄症の手術とリスクについて

この記事は脊柱管狭窄症でお悩みの方で、病院の先生から手術の可能性も示唆された時に知っておきたい内容をお伝えしていきます。

こんなお悩みはありませんか??

腰痛で病院にて脊柱管狭窄症の診断を受ける方がおられます。

最近は、手術適応の診断を受けて手術が必要なのか悩みながら当院に来院される方もいらっしゃいます。そこで、この記事を読むことで

  1. 脊柱管狭窄症とは?
  2. 脊柱管狭窄症の症状について
  3. 脊柱管狭窄症の手術とは
  4. 手術の費用や成功率、手術のリスク
  5. 薬物療法について
  6. 一般的な保存療法の治療方法
  7. 当院の施術方法の違いについて

などなどがわかります。

脊柱管狭窄症とは?

脊柱管とは

脊柱管(せきちゅうかん)とは

椎体という背骨が連なってできているトンネル状の管のことを言います。

脊柱管の中には頭部からの脊髄神経が通っており、上から頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の菅を通って仙骨へ通り抜けていきます。

また腰椎部では、脊髄神経は筆の先のような束状になっている馬尾神経から神経根となって横から分かれて出ています。

図(背骨)↓の黄色いところが通っている所が脊柱管です。

脊柱管とは

脊柱管狭窄症とは

では脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは何なのかと言うと、

先ほど出てきた脊柱管の中を通っている脊髄神経が圧迫されて生じるもので

後方にある黄色靭帯が分厚くなったり前方の椎間板が飛び出ることによって圧迫されているケースが多いです。

あるいはすべり症などの椎体同士のズレや椎間関節の変形による狭窄、腰椎椎間板ヘルニアによってなったりすることもあり

総じて
脊柱管の中が狭くなったり、
なにかによって神経が圧迫されて
しびれや痛みの症状が出ることを
脊柱管狭窄症と言います。

腰椎の脊柱管狭窄の状態

原因の多くは加齢によるもので高齢者に多くなっていきます。

なお、脊柱管狭窄症は2つのタイプに分けることができます。

一つは加齢によって脊柱管が狭くなる
腰部脊柱管狭窄症タイプ、


そしてもう一つが
椎体がずれることによって脊柱管が狭くなる
すべり症タイプ2つです。

脊柱管狭窄症とは

脊柱管の中が狭くなったり、なにかによって神経が圧迫されて
しびれや痛みの症状が出ることを脊柱管狭窄症と言います。

腰部脊柱管狭窄症の症状とは

脊柱管狭窄症の診断基準

脊柱管狭窄症の診断基準
  1. 殿部から下肢の疼痛やしびれを有する
  2. 殿部から下肢の疼痛やしびれは立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し,前屈や座位保持で軽快する
  3. 歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する
  4. MRIなどの画像で脊柱管や椎間孔の変性狭窄状態が確認され,臨床所見を説明できる

となっておりこれら4項目すべてを満たすことで「脊柱管狭窄症」と診断されることとなります。

脊柱管狭窄症は頚椎腰椎に多く発症しています。

頚椎による脊柱管狭窄症の場合は、
手足のしびれや運動障害が出てきます。



例えば、字が書きにくくなる。食事の際のお箸が使いにくいといった手指の動きの症状に加えて、歩きにくいといった足の症状も出現します。

腰椎の脊柱管狭窄症の場合は、

腰椎の狭窄部より下に、下肢の痛み・しびれが出現します。

脊柱管狭窄症の最大の特徴としては、
しばらく歩くとお尻や足先にかけて痛み・しびれが出て、座ったりかがんだりと身体を丸くして休むと楽になり、また歩き始めると再び痛み・しびれが出てくるようになるといった、間欠跛行(かんけつはこう)と呼ばれる症状が挙げられます。

ひどくなると長い距離を歩けなくなり、歩いては休んでの繰り返しになります。

そして、さらに症状が進むと常時、しびれ・痛みが出現、膀胱直腸及び排尿障害に至ります。

そして下肢の筋力低下とともに下肢の筋肉はやせてしまいます。

膀胱直腸障害・排尿障害について

排尿障害についてですが

夜、寝ている間に何回もトイレに行く方、トイレでの尿の出る勢いが弱くなっているなどの頻尿、残尿感、開始遅延といった症状を感じている方の中には、

もしかしたら
この腰部脊柱管狭窄症が原因となっている場合があるかもしれません。

しかし、男性の方の排尿障害の場合は、前立腺肥大症であったり前立腺がんであることも疑われます。

病院の泌尿器科で排尿障害について受診を勧めますが泌尿器科においても排尿障害の原因がわからない場合、もしかすると腰部脊柱管狭窄症が原因である場合があります。

排尿障害・尿もれ
腰部脊柱管狭窄症の症状とは

間欠性跛行:背中を伸ばしての歩行が辛い(足のしびれ・痛み)
膀胱直腸障害・排尿障害

一般的な脊柱管狭窄症の治療方法

基本的には薬の服用やブロック注射といった保存療法で数カ月。

脊柱管狭窄症の症状は神経の圧迫のみならず、神経周囲の血流障害も出る場合があるので、
このように血管を広げ血流を増やす薬物を使用します。

消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛に対する鎮痛薬、そして先ほどの血流障害を改善するための血管拡張剤など。

その他には、また物理療法・理学療法などが行われます。

物理療法では電気治療器を使ったり温熱療法を行ったりします。

またコルセットなどを装着して改善を図る方法もあります。 (基本的に痛みがひどい場合以外はコルセットの着用はお勧めしません。装着するだけで体幹筋力が落ちてしまいます。)

腰回りの腰背部の筋力を維持、あるいは強化といった筋力強化運動。腰背部のストレッチといった運動療法などもあり、

例えば、仰向けに寝た状態から膝を抱き抱えるようにして体を丸めるイメージで2・30秒程度実施していきます。

いずれにしても物理療法や理学療法を行うことで、脊柱管の狭窄自体が解消されるという効果は薄いのですが、あくまで対症療法的な効果であったり症状の増悪・再発を防止させるといった側面で行われることが多いです。

手術が必要な脊柱管狭窄症とは?

では保存療法ではなかなか改善しない場合、手術も検討視野に入りますが、どのような方が手術適応になるかと言うと

痛みがひどくてコントロールできない場合や数か月間、上記のような保存療法で改善されない場合、下肢の筋力低下や膀胱や直腸及び排尿・排便障害がある場合に手術が適応されるようになります。

手術は除圧術、固定術の二つに大きく分かれます。

脊柱管狭窄症の手術とは?

脊柱管狭窄症の手術には、主に二つ「除圧術」「固定術」があります。

まず除圧術とは、
切開をして椎弓などの骨の一部とごつくなっている黄色靭帯などを取り除き脊柱管を広げながら神経の圧迫を取り除く方法です。

そしてもう一つは
それに加えてさらに上下の骨を癒合する方法です。

一方、固定術は、
脊柱管を広げ神経の圧迫を取り除いた後に、グラグラして不安定な脊椎間を安定させる目的で骨を移植して金属やボルトを用いて固定する方法です。

どちらの方法においても、
内視鏡を用いたりして、患者さんにとってなるべく負担の少ない低侵襲な手術を行う場合があります。

除圧術

切開をして椎弓などの骨の一部とごつくなっている黄色靭帯などを取り除き、脊柱管を広げながら神経の圧迫を取り除く方法 。

固定術

脊柱管を広げ神経の圧迫を取り除いた後に、グラグラして不安定な脊椎間を安定させる目的で骨を移植して金属やボルトを用いて固定する方法です。

手術の成功率は?

日本整形外科学会および日本脊椎脊髄病学会監修による「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011」においては

「手術適応と判断された患者において、罹病期間が長すぎると十分な改善を得られないことがある。」

「安静時の下肢しびれは消失しにくい。」

「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011」


との記載があります。
すなわち手術適応の患者さんにおいて発症期間が長い人は十分な改善は得られないことがあるとのこと。

そして安静時の下肢のしびれは手術をしても改善しにくいと言われています。

脊柱管狭窄症の手術を行うことで症状の改善されるものの、全員ではなく術後も痺れが残る方もいるという事です。

手術を受けて一旦は症状が改善されたものの4年から5年の内に再発するという可能性もあると言われています。

手術に伴うリスクとは

脊柱管狭窄症の手術の目的は、
脊柱管の神経に圧迫など障害を与えているものを取り除き、神経がこれ以上傷害されないようにすることです。

圧迫が解除された脊柱管の神経に自己修復する能力が残っていれば、症状は軽減しますが、術後にどのくらい症状が改善するかは予測ができません。

実際に脊柱管狭窄症の手術をした患者さんの約7割は症状の改善を実感できたという報告がありますが、

逆に言うと残り3割は変化なかったと言えるのではないでしょうか。

また損傷されて神経が回復できない部分は後遺症として残ります。

手術後に痛みは比較的取れやすいものの、しびれの改善や落ちてしまった運動機能は戻りにくいと言われています。

脊柱管狭窄症の手術では、合併症のリスクも伴ってきます。

神経損傷・硬膜損傷・傷の感染・血種による神経への圧迫・肝機能障害・血栓症などが挙げられます。

また固定術は除圧法と比べるとリスクが高くなるといわれています。

脊柱管の椎体を切開する際に神経に損傷を与えた場合に起こる下肢麻痺、下肢知覚鈍麻、排尿排便障害など。

また創部感染あるいは椎間板に炎症がみられる術後椎間板炎

神経を包んでいる膜(硬膜)の損傷による脊髄液の漏出、およびこれに引き続き生じる髄膜炎。

創部の血腫形成による神経麻痺・下肢痛腹部の大血管の損傷による術中の大出血

その他の稀な合併症として深部静脈血栓症、肺炎などの感染症などが生じることもあります。

固定術においては、固定するための器具の破損や固定が緩くなって腰椎がずれてしまったり、また固定している金属や人工材料に対してのアレルギー反応。

また固定されることによる腰に違和感や、倦怠感、痛みが長い場合は約1年間症状が現れる事もあります。

背骨を固定する事になることによって腰を曲げたり捻ったりする動作は困難になったりもします。

最近では技術も向上し内視鏡を用いたりするなどして患者さんにとってなるべく負担の少ない低侵襲な手術が行われています。

それによって脊柱管狭窄症の手術で失敗するリスクは限りなく低くなっていると言えます。

しかし上記のように、
手術をしたら完全に治るというわけではなくとくに高齢になってくると体力や回復力など、

思っている以上に完治に時間がかかる可能性もあります。

また手術によって体にも少なからずダメージを与えるリスクがあり。
特に脊柱管といった神経のそばを取り扱う手術になると侵襲のリスクも想定され
術後の経過は特に慎重になります。

体が反応するほどのダメージ『侵襲』を受けた場合のリスクとは?

術後の侵襲とは?

侵襲が起こると、私たちの体は炎症や免疫反応を起こして体の正常な反応が阻害されます。この反応の程度によっては治療を行った部分だけでなく健康な組織までがその反応に巻き込まれて、害を受けてしまうことがあるのです。

反応によるダメージの重さは、傷跡が残るほどのよくあるものから重篤なものまでさまざまで、不全が起こる場所が手術を行ったところと異なるケースもよく起こります。

また、侵襲を受けた細胞が放出する炎症の原因物質がストレスとなって、イライラや過敏、気分の落ち込みといった精神的なダメージが起こるケースも報告されています。これらの症状や精神の不安定さを抱えたまま日常生活を送るのは、非常に休まらないものであったのではないかと想像できます。

引用元: AltPaperストレスチェック・サービス


したがって
手術をする前には医師からの十分な説明を聞いて、本当に手術が自分にとって必要なのか周囲の人と相談しながら、セカンドオピニオンで別の病院での診断を仰ぎながら決定していくと良いでしょう。

手術ありきではなく保存療法で痛み・痺れの改善の余地がないか十分に検討、そして治療を実施してからあとに手術を検討するということが大事ではないかと思います。

もちろん手術の技術も向上しているため手術中の事故も少なくなってきていますが、

やはり脊柱管の脊髄は身体の中心を支える重要な部位にありますので、手術のリスクもまったくないわけではありません。

これらのリスクを考慮しながら手術をする必要があるのか、医師とよく相談していかなければなりません。

脊柱管狭窄症手術の費用はどのくらい?

脊柱管狭窄症の手術は、
内視鏡下手術で20万円から30万円で入院期間は2~7日間。

保険適応外のレーザー治療であれば
30万~50万円かかると言われています。

さらに入院に伴う部屋代や食事代などの実費負担分も追加でかかってきます。

手術の前にやっておきたいこと

以前のように
脊柱管狭窄症で手術を行うということは減ってきていますが、手術される方も少なくありません。

しかし、その前に少しでも改善の可能性があるのであれば、やっておいてもらいたいことがあります。

それは脊柱管狭窄症を引き起こした原因を特定して原因そのものを取り除くという事です。

脊柱管狭窄症というのはあくまで結果です。

結果、脊柱管狭窄症になってしまったということです。
じゃあなぜ脊柱管狭窄症になってしまったのか原因を取り除かない限りは

脊柱管狭窄をそっくりそのまま手術で取り除いたとしても原因がほったらかしであるため再発、
もしくはまた新たな障害を生む可能性もあります。

そのために、どこに原因があったのか特定します。

そして見つかれば、可能であれば運動療法で改善させていきます。

椎体の骨と骨のズレによって引き起こされた狭窄や、椎間板や靭帯といった軟部組織の変形であれば、運動等によって神経の圧迫を軽減させることは可能です。

適切なその方に必要な運動をすることで普段動いていなかった部分を動くように誘導したり、
筋への働きかけで姿勢改善を促し身体の傾きを整え、脊柱管狭窄症の症状を緩和することはできます。

高齢者も運動を行うことで症状が改善

今回は脊柱管狭窄症の手術について
お話しさせていただきましたがいかがだったでしょうか?

脊柱管狭窄症の手術をしても残念ながら完治せず、再発する患者さんもいらっしゃるため手術を回避するケースが増えてきています。

そしてその代わりに運動療法がおこなわれるようになってきています。

高齢の方でも運動を行うことで脊柱管狭窄症の症状が改善されるという報告があります。

現在は脊柱管狭窄症の治療は整形外科だけのものではなくなりつつあります。

それは整骨・接骨院、そして整体院でも脊柱管狭窄症を改善する運動療法を行いますので手術を決断される前に一声かけてみてはいかがでしょうか?

ここまで脊柱管狭窄症の手術についてお話しさせていただきましたが、脊柱管狭窄症の手術というのは、症状がかなり深刻で日常生活に使用をきたしているような方に行われています。

最近では保存療法が主になってきており、適切な治療を行うことで改善される方が大勢いらっしゃいますので、真っ先に手術について考える必要はないと言えます。

手術の前に、保存療法の施術を検討してみてはいかがでしょうか?

ぜひ一度、ゆかい整体 にご相談ください!

併せて読んでおきたい記事

脊柱管狭窄症に処方される薬とは
脊柱管狭窄症の間違ったリハビリとは?

参照:「脊柱管狭窄症」一般社団法人日本脊髄外科学会

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上杉 光生(うえすぎ こうせい)ゆかい整体 院長(理学療法士)
【資格】
・理学療法士
【経歴】
・1976年愛媛県八幡浜市生まれ。
・1999年愛媛十全医療学院 理学療法士学科卒業
・総合病院勤務
・訪問看護ステーション勤務
・デイサービスセンター勤務
・ゆかい整体開院
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